西日本新聞掲載記事H17・8・28朝刊西日本新聞・平成17年8月28日朝刊(九州地区)チャレンジせんせい 「考える力を養うディベート」 北九州市立香月小学校 菊池 省三さん 「私たちの校区にレジャー施設は必要か」「弥生時代は幸せだったか」- 決められたテーマについて肯定と否定の二つの立場に分かれて討論する「ディベート」を、 積極的に授業に取り入れています。 ディベートでは根拠を示して論証したり、相手の主張を質問で確かめたりする作業が必 要になります。論理的な思考はもちろん、相手の立場で考えるというコミュニケーション の基本が身につくのです。 ■ ■ ディベートを使った教育に取り組むきっかけは、十五年前にさかのぼります。当時勤め た小学校で学級崩壊状態だった六年生を担任したのです。始業式後の教室で、たった一言 の自己紹介もできずに次々と泣き出す子どもたち。クラスの人間関係が崩壊してしまって いる様を目の当たりにし、「どにかく一年かけて人前で話ができる子どもたちにしよう」と 決めました。 まず日常のできごとなどを話す「スピーチ」から始めました。話すこと、聞くことがで きるようになって、次は「対話・会話」に進み、最後に「話し合い・討論」を使ってクラ スの人間関係を少しずつ修復しました。ディベートは他者とのコミュニケーション能力を 培う一つの方法にすぎません。十五年前のこのクラスで、対人関係作りの初歩に直面した 経験が、「きずなの強い学級づくり」という私の教育哲学の原風景になっています。 ■ ■ もちろん、ディベートで試される「考える力」の前提として必要なのは、基礎的な力で す。ディベートが万能なのではなく、暗記や反復学習は絶対に必要なのです。とくに語彙 力は考えを深めるための道具として大切なものです。私のクラスの子は全員、机の上に国 語辞典と今読んでいる本を常に置いています。子どもの活字離れが指摘されていますが、 私のクラスの三十三人を見る限り、大人が環境さえ整えてやれば、子どもはきちんと本に 親しむものだと感じています。 ◇ 香月小 北九州市八幡西区香月中央三丁目。一九一八年創立で、児童数は三百九十九 人。旧産炭地で高齢化が進むが、蛍で有名な黒川など地域の自然や文化を生かした学習が 盛ん。 ジャンル別一覧
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